桐箪笥は大阪が発祥の地。江戸時代には製造方法が確立し、その後、堺を経て泉州にその技術が広まり産地として盛んになる。良質な材料と高い技術を要する大阪泉州桐箪笥は“桐箪笥の最高峰”と言われている。
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大阪泉州桐箪笥を製作する田中家具製作所(初音の家具)があるのは泉州・岸和田市。それぞれ専門の技術を持った職人が、自分に任された工程を最高の技術で仕上げる。製作だけではなく修理・修繕も請け負う田中家具製作所(初音の家具)。1世紀前の桐箪笥が持ち込まれることもある。
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伝統工芸士・田中 美志樹は工房の全行程を取り仕切る。田中の仕事の一つは、箪笥作りの要となる木取り。桐箪笥に使う材を選び、桐箪笥の表情を決めて、職人に組み立ての指示をする。
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田中家具製作所(初音の家具)は、良質の国産材および米国産の桐材を原木で仕入れる。樹齢の高い国産の桐は伐採されてしまい、現在では北米の大自然で育った桐の方が樹齢が高く、高価だが品質が良いものが多い。
それらの桐を2、3年掛けて屋外で自然乾燥。あえて雨に晒すことで灰汁を抜き、木の中までしっかりと乾燥させることで変色・変形しない良質の桐材となる。
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工房の外には膨大な桐材が並ぶ。田中は毎日、桐材を見て回っているのでどの木がどのような木目なのかを把握していると言う。
田中が行う「木取り」は桐箪笥づくりの要。木取りを行う際、木目の流れが美しくなるように桐材を組合せる。完成形を想像しながら、各部材「上戸」「中戸」「引出し」が柾目と平行になるように部分毎に考えていく。この木取りは、桐箪笥の価値を決める最も重要な工程だ。
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長年の自然乾燥によって、どうしても桐材は歪みが生じてしまう。そこで行うのが「歪直し」。歪みは炎で炙り圧力をかけて平にしていく。完成した桐箪笥が歪みを起こさないために、桐材を真っすぐにする仕事は欠かすことができない。
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「天板」「胴板」「引出」「開戸」「引戸」など、各部の板を決められた寸法に切断し、表面を鉋(かんな)で仕上げていく。すると美しい木肌が現れる。
一つひとつの部位に整えた桐材は、職人の手によって各部位を接合するための仕口が彫られていく。大阪泉州桐箪笥は「蟻組」などの強度が強い組手で接合し、永い年月を耐える堅牢性を持つのが特徴だ。
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田中家具製作所(初音の家具)は組手の種類の多さ、技術の高さに定評がある。
例えば、仕口を隠す組手「留形隠し蟻組接ぎ」。この組手は見た目の美観も損ねず、何よりも組み合わせることで木の反りを止め合い、強度に接着ができる。
まるで、一本の樹木であるかのように桐箪笥が重厚な雰囲気を醸し出す。
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高い組手の技術を駆使することで、丈夫な桐箪笥を作るのはもちろん、湿気からも守ることができる。本体と引出しの隙間を作らずに仕上げることで内部に湿気の侵入を防ぐ。桐箪笥の目的の一つは、収納する着物を守ること。そのために職人の手で丁寧に微調整を加えていく。
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調整のために鉋(かんな)で、わずか0.01mm単位という高い精度で削り取っていく。箪笥本体と引出しの隙間が生まれないようにするために。
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桐の美しい木肌を木目細かく仕上げるために、砥の粉を数回繰り返して厚く塗り重ねる。そして、お客さんの好みに合わせて彫金の職人が仕上げた金具を取り付けて完成。
これらの工程を経て、造形美と機能美が込められた「優れた家財道具」へと仕上がるのだ。
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昔から桐箪笥は嫁入り道具の一つ。湿気にも強く、さらに桐は燃えにくいという特性から「家財を守る」必需品だった。
「桐箪笥はまさに一生もんですわ」と田中が語る。着物をはじめ、家族にとって大切なものは田中家具製作所(初音の家具)の確かな技術と手間によって長い間守られ続けていく。