すでに飛鳥時代の頃から日本で作られ始めた絞り染め。布の一部を絹糸で硬く絞って、染まらない部分を作ることで模様を作っていく。絞り染めは農閑期の産業として亀岡の地でも盛んに作られ、京鹿の子絞りの産地として有名になる。
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京都から少し離れた亀岡に工房を構える伝統工芸士・清江和雄。彼は図案や配色の考案、下絵作り、絞り方、染分けなど絞り染めの数多い工程や技法について全体を通して知る数少ない職人の一人である。
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京鹿の子絞りの染色の特徴は、いかに染まらない部分を作るかということ。そのためにさまざまな試行錯誤がなされ、技術が発展した。現在、50種類以上の技法が受継がれている絞り染め。一つの技法に特化した職人も存在し、技法の数だけ職人がいると言われている。さまざまな職人の絞りの技が込められ、反物ができ上がっていく。
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京鹿の子絞りの代表的な技法が疋田(ひきた)絞。この技法で絞って作る紋様が、子鹿の背に似た紋様を作ることが「鹿の子絞」と呼ばれる由縁である。その中でも針疋田と呼ばれる技は、針を使って布を引っ掛けて凹凸を作り、その部分を糸で絞っていく。
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疋田絞の中で最も技術と時間を要するのが本疋田絞。この技法を使う職人は下絵に施された青い斑点に合わせて、爪先で絹布を絹糸で一粒一粒絞っていく。微小な世界で繰り出される技で、一反を仕上げるのには3年以上もの月日を費やさなければならない。
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さらに帽子絞りと呼ばれる技法がある。これは、染色しない防染部分をビニールなどで包み込むことで硬く絞って染めない部分を作る絞り染めの技。その他にも傘巻き絞や縫い締め絞など、作り出したい文様によって絞りの技法が異なる。
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絞った絹布は丸ごと染液に浸ける浸染(しんぜん)という方法で染色する。さらに1枚の絹布に複数の色を使う際、染め分けを行うために使う技が桶絞り。この技は京鹿の子絞独特の技法である。
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桶絞りは、染める部分と染めない部分をきれいに分ける技法。大きな桶の中に布を入れ、染めたい部分だけを桶の縁から出し、蓋を強く締め付けて桶を密封する。桶ごと染色液の中に浸けて浸染することで桶の中の布は染まらないからだ。この行程後、桶ごと染色職人に渡す。
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最後に湯伸し(ゆのし)と呼ばれる、絞りによって縮んだ布を蒸気で伸ばし、余分な皺を除く行程を経てようやく完成を迎える。
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清江は「細かな心づかいがないと喜ばれるものは作れない」と語る。
自分の仕事はもちろん、共に仕事をする職人たちへの尊敬の念やお客さんとの対話など、一つひとつの対応を丁寧に行うことが彼の心情だ。
清江はこれからも自分と関わる人たちを京鹿の子絞を通して喜ばし続けていく。