大阪での欄間制作は四天王寺の17世紀初頭の再建に始まるとされる。江戸中期には商家や住宅にも欄間が用いられ、大阪での生産も盛んになった。江戸後期には透彫や組子などの欄間が作られるようになり、その木工技術は大阪の地で現代まで受継がれている。
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大阪の摂津に工房を構えて欄間の制作を手掛ける伝統工芸士・木下文男。
彼は欄間が置かれる空間や建物のことからお客様の好みに合わせて、図案から素材まで考案する。木の性質を良く知り、木材を完成まで美しく育てあげる職人。
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素材となる木材は、屋久杉や春日杉、吉野杉、秋田杉、会津桐、檜などから空間に見合ったものを選ぶ。
木の特徴を捉え、木目を美しく活かしながら洗練した軽やかさを備えるのが大阪欄間の特徴。
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木下の頭の中には幾つもの下絵のパターンがある。それぞれの木の特徴と繊維の流れ、そして構図を組み合わせて伸びやかで軽やかな下絵を描き上げる。
当然のことだが、木材は削る部分が多ければ全体の強度は弱くなる。欄間の構図は木の繊維を読みながら強度にも注意を払って決めてゆく。
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構図が決まって下絵を描きあげると、挽きと呼ばれる工程に入る。
下絵に沿って必要のない部分を大まかに削り落として行く。
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たたきとは粗く彫りあげること。挽いた木材を下絵に沿って鑿(のみ)で大きく削り、大まかな形を削り出してゆく。
この作業でも木の繊維を読みながら、素早くたたいて行く。
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隅切りとは、端の縁まで丁寧に仕上げて輪郭をしっかりと綺麗に出すための作業。
欄間を洗練した印象にするために、細かい部分に至るまで鋭く仕上げて行く。
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鋸の跡や荒堀した部分を、小刀で丁寧に仕上げて行く作業がくり。
ヤスリで仕上げた木肌の鈍い表情とは異なり、鋭い刃物で仕上げると木肌が潰れず、軽やかな表情になる。それも木目が本来持つ美しさを引出し、欄間を軽やかな印象に仕立て上げる。
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木下は最後の工程まで妥協なく、木肌と木目を活かした軽やかに洗練した木の表情を整えてゆく。
こうして、木下の木工作品は完成する。
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「残すべきは品種ではない、技術だ」と木下は言う。大阪欄間の制作で培った技術は、木下が作る木工品に活かされている。例えば格式高い寺社建築の彫刻から、透し彫りを施した黒柿の名刺入れまで。
木下は伝統の技を活かし、新しい木工品を現代に生み出し続けている。