奈良時代に遣唐使を通じて伝来し、桃山時代の茶道や書院造りの発展と普及によって発展してきた大阪の唐木指物。
木工に秀でた伝統工芸が多く残る大阪。それを代表する唐木指物は、なお重厚な存在感を持ち続ける。
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大阪の柏原にある株式会社山藤家具工芸は3名の指物師が仕事をする小さな工房。現代の名工・藤原久雄はその中で唐木指物を作る一人。
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藤原たちの仕事は、良い材を集めることから始まる。
唐木とは、紫檀、黒檀、鉄刀木、花梨などの東南アジア原産の水に沈むほど硬く重厚な木のこと。木目が美しく、独特の表情は銘木中の銘木とされる。藤原は良い材を探してアジアの各地まで出向いていた。
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墨棒は、現代でいう設計図。
昔からの家具製作は、この墨棒に全ての寸法を記して正確に寸法を出して部材を切り出してゆく。職人が墨棒を見れば、どのような家具であるかすぐに分かるという。
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大阪の唐木指物は各部材が持つ優美な曲線が特徴だが、藤原の道具は藤原の好みの曲線を描き出すために長年掛けて作られたもの。
唐木は非常に硬く、加工は相当な力を込めて、特殊な鉋(かんな)や鑿(のみ)、鑢(やすり)などの道具で行う。それらの道具も自ら育てる。
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指物は、釘を使わずに全てを組手を指し込んで組み立てる。隙間無く組合わせるために、部材の加工は精巧に行われる。精度高く組合わされた指物は、堅牢な一体の木塊のようになる。
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組上げて磨きなどの工程を経た後、指物は漆をすり込んで表情を仕上げてゆく。
最高級の木材を更に美しく、耐久性も高める仕上げ。
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唐木指物の特徴的な表情は「拭き漆」と呼ばれる技法で生み出されている。漆を塗っては拭き取りを数回繰り返し、鏡のような光沢を木目の上に施してゆく。
耐久性を上げることはもちろん、唐木の持つ表情を生かした贅沢で豪奢な雰囲気が備わる。
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要望にも合わせて、彫刻を施し、螺鈿、蒔絵、彫金された金具などを足して仕上げる。
細部まで丁寧に必要な手間を惜しまずに仕上げることが、唐木指物の重厚な存在感に通じる。
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唐木は「手を掛ければそれだけ応えてくれる」と藤原は言う。
最高級の木材を探し、精巧に削り、堅牢に組み立て、最高の仕上げを施す。それだけの手を掛けた指物には、それだけの職人のこだわりが映り込む。
藤原は唐木指物を通じて、豪奢な中にも柔らかな温かみを人に届けている。