重厚な五彩色が知られる九谷焼。
一旦は廃れつつも江戸時代後期に再興した長い九谷の伝統の中で、赤色を使わない青手、細密な赤絵など、各時代に生まれた様々な色絵や作風が生み出され、現在の九谷焼へと受継がれている。
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九谷焼の伝統工芸士・福島 武山は、九谷焼の中でも特に緻密な「赤絵」を描く職人。
赤絵は、弁柄(べんがら)と呼ばれる鉄分を含む赤い顔料を使い、金襴を施して仕上げる。福島の描く赤絵は、ガラス板の上で弁柄を滑らかになるまで丁寧に摺ることから始まる。
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福島の赤絵は、赤絵細描と呼ばれ精緻な文様と絵を組み合わせた構図が最大の特徴。
弁柄の赤が文様を刻むように、真白の素地の上を極細の筆先が走る。
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福島の赤絵は、線が美しく一様だ。色むらや筆を継いだ跡などを残さず、線の一本一本が凛としている。
淀みのない筆の動きは常に同じリズムを刻み、驚くほど繊細で緻密な世界を鮮やかに描き出す。
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絵を描き上げると窯に入れ、約750度で焼成し、絵を定着させる。
特に福島は一つの器でも、絵付けが進む度に、何回にも分けて窯に入れる。手間は掛かるが描いた部分の絵を定着させて、次に描く部分に集中するために。
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美しい線のための手間は惜しまず、丁寧に上絵付を進める。作品によっては金彩や銀彩を施し、再び約650度で焼成して完成する。
窯から完成した作品を取り上げる喜びは「言葉に表せられない瞬間」だと、福島は言う。
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細かく一様な線はもちろん、福島の描く人物画は柔らかく優しい。
「人物画は表情が命」と朗らかに笑う福島が生み出す作品は、緻密さと柔らかい雰囲気を持ち、赤絵の魅力を現代に伝えていく。